食に特化したワタミが異業種のみまもり事業に参入したのには理由がありました。
宮城・山形以南の地域で全国的に営業拠点を持ち、お弁当・お惣菜をご利用いただくお客さまの大半がご高齢である「ワタミの宅食」では、年間を通してぽつぽつと、お届け役の「まごころスタッフ」がお客さまの緊急事態に遭遇しています。その背景がありながら、新事業立ち上げのためのきっかけとなるできごとが起こります。ある日、ワタミの会長 渡邉美樹が新聞をめくると、読者の投書欄がありました。投書に内容は、お風呂で動けなくなってしまった一人暮らしの方が、一晩経って近所の方に救われたという九死に一生を得たストーリーが記されていたといいます。しかしご高齢のお客さまにお届けを行う「ワタミの宅食」の現場では、珍しいことではありません。記事にある状況の重なりにヒントを得てサービス構築の動きが始まりました。
「みまもりサービス」責任者の森園啓司
ワタミの「みまもりサービス」の事業化にあたってはプロジェクトチームが組まれ、その責任者は森園啓司が選ばれました。社内にロードマップが存在しない新事業の立ち上げに、森園はプロジェクトチームを率いてゼロから模索を始めます。
そしてはじめに行ったのは同業他社の実例の把握でした。各社ではセンサーなど機器を使って緊急事態を察知し緊急時に警備会社が駆けつけるサービス、週や月に1度など比較的長いスパンの中で訪問員が訪ねるなどのサービスが展開されています。森園らはそれらを俯瞰しつつ、ワタミがサービスを提供するとはどういうことなのか、望まれる手段とは何であるかを考えたといいます。
「機械を使うみまもりはわかりやすく、はじめは私たちも起用を考えました。でもワタミらしくはないかなと感じたんです。私たちのサービスは『ワタミの宅食』のお客さまの生活に沿い、安心してご利用いただけるものにしたいと思いました」